@article{oai:u-ryukyu.repo.nii.ac.jp:02004138, author = {Akamine, Kenji and 赤嶺, 健治}, issue = {1}, journal = {言語文化研究紀要 : Scripsimus}, month = {Jul}, note = {1869年に出版されたThe Innocents Abroad(『赤毛布外遊記」)は、作者マーク・トウェインが1867年6月から11月までの約5か月間、蒸気船クウェーカーシティ号によるヨーロッパと聖地巡礼の旅にサンフランシスコのアルタ・カリフォルニア紙の特派員として同行し、旅先から書き送った58通の手紙を基に書き上げた旅行記である。マーク・トウェインは、本作品の他にも、Roughing It(1872)、A Tramp Abroad(1880)、Following the Equator(1897)等の旅行記を書いているが、ベストセラーとなったのはこのInnocents Abroadのみで、本作品が彼の旅行記の中でも最も高い評価を得ており、「アメリカ人が書いた海外旅行記の中で最も人気のある本」と評されている。本作品の重要な特徴は、作者自身も序文で公言しているように、ヨーロッパと東洋を先人の目、つまり当時広く読まれていたガイドブックを通じて、ではなく「自分の目」で見るという作者のリアリストとしての自覚と視点にある。このことは、ノーマン・フォースターが、1869年を、本作品が出版された年という理由から、アメリカン・リアリズムの出発点としていることでも裏書きされている。マーク・トウェインは、訪問する各地での見聞記の中に、ヨーロッパを中心とした旧世界のみならず新世界アメリカの人間と社会、文明全般についての正鵠を射る批判を行っている。アメリカについては、まず同行者の中の「巡礼者」と呼ばれる人々の、訪問先での先入観に影響された誤った価値判断や宗教的偽善を風刺する一方で、アメリカ人一般の物欲に根差したゆとりのない生活ぶりを批判している。旧世界については、彼の文明評価の尺度である「庶民の経済的、道徳的水準」を当てはめて、イタリアにおける貧困にあえぐ庶民と栄華をきわめる教会との間の断層、聖地パレスチナでの庶民の貧困などの厳しい現実に直面して味わう幻滅の悲哀が語られている。マーク・トウェインは、アメリ力人としての誇りを前面に押し出し、旧世界の風物に対するアメリカの風物の優位、例えばイタリアのコモ湖やパレスチナのガリラヤ湖よりもカリフォルニア、ネヴァダ両州にまたがるターホー湖の方がはるかに美しいし、ヨルダン川よりもニューヨーク市のブロートウェイ通りの方が大きいことなどを自慢する。しかし、彼の手法は、基本的にはリアリストの手法であり、新旧両世界に向けた彼の風刺や批判には客観性がある。本作品でもマーク・トウェインは、過去の文明と将来の文明の間に立って双方を鋭い眼差しで見透す、いわば双面神ヤヌスのような批評家であり、本作品は、彼自身のみならずアメリカン・リアリズムの発展の前ぶれ又は先駆けとして重要な意義と内容をもつものであると言えよう。, 紀要論文}, pages = {25--45}, title = {Mark Twain as a Janus-faced Critic of the Old and New Worlds in The Innocents Abroad}, year = {1992} }